海ごみには、海の美観を損なう以上に、様々な大きな問題があります。
ゴーストネット
誤飲
温室効果ガス
危険・有害・粗大漂着廃棄物によるダイレクトな汚染リスク
ゴーストネット
海ごみ問題としてよく目にする写真には、古い漁網にからまって死んだウミガメ、針のついた釣り糸を飲み込んでしまった海鳥、ロープが首に絡まって締め付けられているアシカやオットセイなど、ごみとなってからも自然の生き物を獲り続ける漁具が写っています。漁具は丈夫にできていて、ごみとなってから海中で細かく分解するまでには、数百年もかかると考えられています。少なくとも今後100年以上は、誰も知らない所で、漂いながら、あるいは海底に引っかかったまま、通りすがりの生物を絡めて殺し続けます。そのため、これらの網は、ゴーストネットと呼ばれています。
誤飲
海を漂うレジ袋やビニール袋は、アカウミガメの餌となるクラゲによく似ています。このため、クラゲと間違えてプラスチックの袋を飲み込み、胃や腸にプラスチックが詰まって死んでしまったウミガメが、時々打ち上げられるようになりました。ミッドウェー諸島で繁殖するコアホウドリは、海面近くを泳ぐ小魚を餌としています。親鳥が餌の魚と間違えて海ごみを丸呑みし、それを巣に戻ってから吐き戻して雛に与えるので、雛は胃袋が海ごみでいっぱいになって、ついに死んでしまいます。プラスチックごみを吐き戻せなかった親鳥も、やがては胃袋がプラスチックでいっぱいになり、餌が食べられなくなって死んでしまいます。
コアホウドリの胃内容物
これはちょっと特別な海ごみの写真です。ミッドウェー諸島で繁殖する、コアホウドリの雛が食べたもの。
ごみでお腹が一杯になり、死んだ雛の中から出て来たごみです。沖縄の海岸で見つかるごみと、殆ど変わりがありません。よく見ると、日本のサインペン、ライター、歯ブラシ、カキ養殖パイプ、漁具の浮き、ケミカルライトなどなど、私たちが捨てたものばかり。もしこうして拾われなければ、やがて台風や豪雨で海に流され、さらに何度も別の鳥や魚に食べられていたかもしれません。私たちが水に流した問題は、世界中に広がり、よその国で生き物たちを苦しめています。
劣化プラスチックは温室効果ガスを放出している
古くなったプラスチックからは、メタンやエチレンなど、温室効果ガス（温暖化ガス）が放出されているそうです。プラスチックの中では、レジ袋に使われているポリエチレンが、一番たくさん温室効果ガスを出しているらしい。今の地球は、80億トン以上のプラスチックによって、隅々まで汚染されています。さらにこのままだと、2040年には、今の倍のプラスチックが生産されると予想されています。
危険・有害・粗大漂着廃棄物によるダイレクトな汚染リスク
平成30年度の沖縄県海岸漂着物等対策推進協議会資料には、『調査レポート ～美ら島に願う 撤去処分の厄介な危険・有害・粗大漂着廃棄物によるダイレクトな汚染リスク ～20年の沖縄調査を踏まえて～』と題して、漂着ごみ研究家、工学博士山口晴幸防衛大学校名誉教授による、驚くべき量の危険で有害な海ごみのデータが掲載されています。これを読めば、海ごみは単に目障りで汚いから拾えばいいという物ではなく、海岸を極度に汚染する危険で厄介な物であり、海ごみにならないよう徹底して回収処理することが重要だと理解できます。また、危険な有害化学物質を海岸の環境中に分散させる、ごみの野焼きの危険性も指摘してあります。
博士は、沖縄島から八重山まで、20年間で合計168回来沖し、延べ837の海岸（累計433.46Km）を全て歩いて調査されました。ちなみに博士は、沖縄だけでなく、日本全国の海岸で海ごみの調査を長年続けられ、重金属などの有害化学物質の分析と解析を精力的に行って来られました。その中でのこの調査レポートは、沖縄の海ごみの危険性や問題の大きさを理解する上で、非常に重要です。
レポートには、地図や写真に加え、対象とした有害漂着廃棄物毎に、調査した海岸の数と有害漂着廃棄物の確認数量など、詳細なデータが示されています。また、沖縄島嶼で確認した水銀ランプや蛍光灯に入っている水銀量の推定も行われ、水銀の入った電球や蛍光灯が海岸に放置されたり不適切に処理されることで、年間10,0000mg以上の水銀が自然界に放出されていることを指摘しています。代表的な法律における大気・水質・土壌に関する水銀の基準値も示され、海ごみから自然界に放出される水銀が決して少ない量とは言えないことも示されています。
調査レポートの目次 １．調査の経緯とねらい／ ２．危険で有害な漂着廃棄物の漂着概説 ①感染リスクが懸念される危険極まりない医療廃棄物 ②有毒液体が残存する危険な韓国製廃ポリタンク ③水銀リスクが懸念される危険な管球類廃棄物 ④危険で撤去処分の厄介な粗大廃棄物（ドラム缶・ガスボンベ・粗大電化品・車両タイヤ）／ ３．美ら島に願う
