マイクロプラスチック

 沖縄の海岸に打ち上げられたプラスチック類は、強い紫外線や高温などの影響でさらにボロボロになり、マイクロプラスチック(5mm以下のかけら)になります。同時に、プラスチックに含まれていた有害添加物は、砂の中に溶け出します。砂浜のごみ溜まりからは、添加物由来の有害物質が高濃度に検出され、そこに生育する海浜植物からも、同様の有害物質が検出されています。
プラスチックが数ミリに砕けて砂と混ざってしまうと、水より比重の軽いかけら以外は、ほぼ回収不可能です。雨や風で再度海に流れ出たマイクロプラスチックは、小さな魚の稚魚や動物プランクトンまでもが餌と間違えて食べ、海のほぼ全ての動物に影響を及ぼしています。

沖縄の海岸のマイクロプラスチックの密度
沖縄でのマイクロプラスチック調査の所感
家庭から出るマイクロプラスチック
マイクロプラスチックは有機汚染物質を吸着

 長年日本全国の浜辺でマイクロプラスチックを調査されている山口晴幸先生の報告によると、これまで沖縄の11の島の57の海岸で調査を行なった結果、沖縄の海岸には、1平方メートルにマイクロプラスチック(1mm以上、5mm以下)が、平均で約2,041個となっています。

 また山口先生は、「沖縄でのマイクロプラスチック調査の所感」として、
1:海浜の土壌中には、海洋上よりも遥かに高い密度でマイクロプラスチックが漂着・混在している。
2:亜熱帯海洋性気候下の沖縄海浜域は、マイクロプラスチックの主要な生成・排出場となっている。

3:マイクロプラスチックの回収・除去は絶望的な作業。迅速且つ定期的な漂着ゴミ清掃が必要。
4:摂食による海生生物への汚染リスク(食物連鎖等)がある。全国的海岸調査への警鐘となる。
と示されています。
 海のマイクロプラスチックの回収・除去が絶望的な作業である以上、もうこれ以上マイクロプラスチックを増やすことはできません。プラスチックを野外に捨てないのはもちろん、不要な使い捨てのプラスチックは買わない・使わない・断る、無理のない範囲で自然素材の製品を選ぶなど、自分にできることを探して、暮らしの中からプラスチックを減らしていく事が私たちには求められています。

 マイクロプラスチックは、海で劣化するだけでなく、家庭排水からも供給されています。一部のスクラブ入り化粧品、ラメ入り化粧品、歯磨きペーストには、ザラザラさせたりキラキラさせるために、プラスチックの粒子を含む製品があります。これらは使用後に洗い流されて、家庭の下水から浄化槽をすりぬけて川へ流れ、そして海に流れ着きます。都市の下水処理場では、バクテリアによる有機物の分解、薬剤による凝集・沈殿、活性炭による溶存化学物質の吸着などが主な処理行程となります。目の細かいフィルター等を使ってごみを濾過しているわけではないので、下水中の懸濁物の除去には限界があります。微細なマイクロプラスチックは、処理場をすり抜けて、自然の中に放出されています。
 洗濯物からも、繊維状のマイクロプラスチックが流れ出ています。洗濯機のネットをすり抜けるほど小さな繊維のカケラは、洗剤や汚れと一緒に下水に流れます。綿や麻など、植物由来の繊維はバクテリアが分解してくれますが、化学繊維は分解できないので、処理場をすり抜けて自然の中に放出されます。衣類から抜け出る繊維は、洗濯だけに限らず、常に日常的に起こっています。そのため、みなさんが普段経験しているように、部屋の中なら床などに綿埃がたまることになります。野外で飛散した微細な繊維は、雨で流されて海にたどり着きます。

 プラスチックには、海水中に漂う有機汚染物質を吸着する性質があります。これまで何十年も工場や家庭から海に流された有機汚染物質は、海水中に広く分散しています。小さなマイクロプラスチックの表面にも、有害汚染物質が吸着され、毒団子状態となっています。これが様々な動物に食べられ、有害汚染物質は消化吸収されて、生き物の体内に蓄積されます。それをさらに大きな生き物が食べる事で、汚染物質は海の食物連鎖の中に入り込み、最終的には我々の食卓に届いています。