いろいろなプラスチック

 プラスチック製品をよく見ると、リサイクルする時にわかりやすいよう、プラスチックの材質を表すマーク(PP、PE、PETなど)が付いている物があります。アイスコーヒーをテイクアウトする時のプラスチックカップや、ペットボトルなどは、製品を作るとき底に型押しされています。製品よっては、シールや箱に印刷してあるなど、表示方法はさまざまです。例えば、ペットボトルの成分はポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate)で、略してPET。ペットボトルは、PETで出来たボトルです。

そもそも、プラスチックとは?

暮らしの中で見かける代表的なプラスチック
ABS樹脂
AS樹脂
アクリル樹脂(PMMA)
アセテート
エチレン酢酸ビニル(EVA)
エポキシ樹脂(EP)
シリコン樹脂(SI)
ポリウレタン樹脂(PUR)
ポリエチレン(PE)
ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリ塩化ビニル(PVC)
ポリカーボネート(PC)
ポリスチレン(PS)
ポリプロピレン(PP)
メラミン樹脂(MF)

 

ABS樹脂
 アクリロニトリル(AN)、ブタジエン(BD)、スチレン(ST)からできているので、ABS樹脂。3つのプラスチックの性質が合わさっています。光沢があり、色も着けやすい。酸やアルカリにも強い。硬くて壊れにくい。野外では、紫外線の影響で色が抜けて劣化します。

 家電製品の部品や本体、自動車の部品、おもちゃ(レゴブロック)、家具など、多くの日用品に使われています。材料のスチレンは有害性がありますが、ABS樹脂は硬いので、ほとんど漏れ出ることはないと考えられています。燃えやすい場所で利用する製品には、毒性のある難燃剤が含まれている可能性があります。

 海に流れ出ると、海水より重いので、海底に沈んでいます。

 

AS樹脂
 アクリロニトリル(AN)とスチレン(ST)からできているので、AS樹脂。スチレンの透明さに、強さが加わっています。

 扇風機の羽や冷蔵庫の透明な部品、ライターなどに利用されています。材料のスチレンは有害性がありますが、AS樹脂は硬いので、ほとんど漏れ出ることはないと考えられています。燃えやすい場所で利用する製品には、毒性のある難燃剤が含まれている可能性があります。

 海に流れ出ると、海水より重いので海底に沈みますが、空のライターには残ったガスが入っているので、海面に浮いて海岸に流れ着きます。

 

アセテート
 木材のセルロースに酢酸を反応させた、アセチルセルロース(酢酸セルロース)からできています。アセチルセルロースの粉末をアセトンなどの溶媒に溶かし、小さな穴から押し出して繊維にします。溶剤や、添加される可塑剤は、人体に有害な物を使う場合があります。半合成繊維。繊維は絹のような光沢があり、サラサラして撥水性があります。

 スカジャン、洋服の裏地、レインコート、傘、メガネ拭き、リボンテープなどに使われています。熱に弱いので、布はプリーツ加工がしやすい。防火カーテンにも使われるなど難燃性があり、熱を加えても嫌な匂いがしないので、タバコのフィルターは主にジアセテートが使われています。繊維以外では、セル枠メガネのフレームに使われています。

 

アクリル樹脂(PMMA)
 メタクリル樹脂、有機ガラスとも呼ばれ、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルからできています。とても透明性が高く、色もつけやすいので、アクリル絵の具やアクリル毛糸としても利用されています。硬くて強く、野外でも劣化しにくい。80℃以上で柔らかくなるので、加工もしやすい。普段は硬いので、強い衝撃を受けると曲がらず割れます。表面は傷つきやすい。酸には強い。

 透明なので、食器や家電製品、乗り物の窓、大型水槽などに使われています。樹脂は硬いので、成分はほとんど漏れ出ることはありませんが、アクリル酸エステルの一種のアクリル酸メチルは、水棲生物に強い毒性を示します。また、メタクリル酸エステルを使った樹脂からは、細胞に毒性があるホルマリンなどが溶け出ます。

 海に流れ出ると、海水より重いので海底に沈んでいます。

 

エチレン酢酸ビニル(EVA
 エチレンと酢酸ビニル(VA)からできています。混ぜる割合により、硬いものからゴム状まで、性質は様々に変化します。可塑材を入れなくてもゴムのように弾力があり、ゴムや塩ビに比べて軽い。-50℃まで冷やしても柔らかい。衝撃や破れにも強い。野外の環境でも強い。

 シール容器の蓋、ジョイントマット、サンダルや靴底、車の泥除け、紙コップのコーティング、グルーガンの接着剤、チューインガム、冷蔵庫のパッキン、浴室マットなどに利用。

 海水より軽いので、海岸にごみとして漂着します。

 

エポキシ樹脂(EP
 接着剤で有名です。ほとんどのエポキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンからできています。様々な種類の硬化剤を混ぜることで、性質を変えることができます。硬くて軽くて、ほとんどの溶剤にも強い。耐熱性もあります。金属やガラスとよくくっつきます。

 様々な用途の接着剤の他にも、車、船、缶詰などの塗装・コーティングに使われています。ビスフェノールA(BPA)は悪名高い内分泌撹乱物質で、生殖や発達だけでなく、遺伝子にも悪影響を及ぼします。エピクロロヒドリンは、発ガン性の可能性が高いらしい。毒物及び劇物取締法では、劇物に指定されています。

 海水より重いので、海底に沈んでいます。

 

シリコン樹脂(SI
 ケイ素樹脂とも言います。シロキサンからできています。耐熱性、耐寒性、耐薬性、耐紫外線、耐候性、絶縁性などに優れています。

 食器、哺乳瓶の口、耐熱・冷凍容器、各種パッキン、コーティング剤、医療用機器など、さまざまに使われています。強酸や強アルカリに弱く、熱水で分解が進みますが、リサイクルは難しい。シロキサンには内分泌撹乱作用がありますが、樹脂としては非常に安定しているので、溶け出しにくい。

 海水より重いので、海底に沈んでいます。

 

ポリウレタン樹脂(PUR
 一般にはウレタンと呼ばれています。主に、ジイソシアネートとポリオールからできています。弾力があり、傷ついても破れにくく、油にも強い。100℃くらいで柔らかくなります。酸、アルカリ、空気中の窒素酸化物、塩分、紫外線、熱、水にも弱く、時間とともに劣化します。燃やすと有毒ガスが出ます。燃えやすいため、添加剤として有害な難燃剤を多く含んでいます。添加剤の組み合わせにより、泡が固まったようなスポンジ状の他に、ゴム状や糸状などがあります。

 クッションやマット、靴底、建物の断熱材、パッキン、ストレッチ素材の繊維(スパンデックス)、そしてウレタン塗料などにも使われています。断熱材のスプレーにはジイソシアネートの仲間で喘息を引き起こすジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が含まれ、ストレッチ素材には皮膚炎の可能性もあります

 海水より重いので、空気を含んでいないものは海底に沈んでいます。

 食器洗いのウレタンスポンジは、使っているとだんだん厚みがなくなり、ヘロヘロになりますね。実はあれ、潰れて薄くなっているのではなくて、ウレタンの表面が粉々になってマイクロプラスチックになり、全体が薄くなっているのです。スポンジがポリエステルのネットに包まれているのは、強度にすぐれたポリエステルのネットで食器を洗いやすくするための詰め物として。キッチンで、毎日マイクロプラスチックを作らないためにも、ナーベラー(ヘチマ)のたわしが、おすすめです。

 

ポリエチレン(PE
 いわゆるポリ袋の材料です。エチレンからできている、最もシンプルな構造のポリマー。密度や構造によって、性質が異なります。加工しやすく、安く大量に作れる。軽くて柔らかく、傷がつきやすい。化学的に安定で、常温では酸やアルカリにも強い。接着や印刷が難しい。

 高密度ポリエチレン(HDPE)は、白いレジ袋、ポリバケツ、様々な日用品、漁網やロープなどに利用されています。100℃くらいで柔らかくなる。

 低密度ポリエチレン(LDPE)は、添加剤を使わずに作ることもできるプラスチック。食品の袋、ゴミ袋やビニール袋、プチプチ緩衝材、ホース、牛乳パックや紙コップの表面コーティング、タッパーの蓋などに利用されています。80℃くらいで溶け始める。

 他のプラスチックより化学的に安定しているので食品包装に多く使われていますが、添加物として、ビスフェノールA、ノニルフェノール、オクチルフェノールなど、内分泌撹乱物質が含まれている物もあります。用途により、難燃剤や紫外線吸収剤など、有害な物質も含まれます。

 水より軽いので、風や波で流されて海岸に漂着します。加えて、有害化学物質を吸着しやすく、海岸漂着ごみは有害化している可能性が高い。

 

ポリエチレンテレフタレート(PET
 聞きなれない名前ですが、PolyEthylene Terephthalateを略してPET。ペットボトルの名前はここから来ています。テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルと、エチレングリコールからできています。透明で硬く、油に強い。縦横に引き伸ばすとさらに強くなり、液体やガスも通しにくくなる。熱水とアルカリには弱い。添加剤として加えられる三酸化アンチモンは発ガン性があり、ペットボトルから微量に溶けでることが知られています。また、高温・長時間であるほど、溶け出る量は増えます。ボトルは60℃くらいで柔らかくなります。

 繊維にすると断熱性と強度に優れています。テトロンやポリエステルとしても有名で、多くの布地、フリース、縫いぐるみの詰め綿などに利用されています。フリースは燃えやすいため、難燃剤が入っているらしい。

 洗濯により、繊維は微細なマイクロプラスチックとなり、川から海へ流れ着きます。PETは海水より重いので、海底に沈んでいます。キャップのついたボトルは、空気が入っているので浮いて流され、漂着ごみとなります。

 

ポリ塩化ビニル(PVC
 発がん性物質の塩化ビニルからできていて、「塩ビ」とも呼ばれます。電気の絶縁性があり、燃えにくく、薬品にも強い。光と熱で簡単に分解されて劣化しますが、ビスフェノールAやノニルフェノールなどの有害な安定剤により、野外でも劣化しにくくなっています。鉛、水銀、カドミウムなどの金属を含む熱安定剤も入っています。硬いものは、強い衝撃で壊れやすい。可塑剤としてフタル酸エステルを大量に入れれば、とても柔らかくなります。添加剤が揮発しているため、塩ビ特有の強い匂いがします。70℃くらいで柔らかくなり始め、燃やせば発ガン性のあるダイオキシンが発生します。

 野外での利用に向いているため、水道管、屋根、ビニールハウスのビニール、電線の被覆、ホース、漁網などに利用されています。身の回りの物としては、ビニール袋、ビニールテープ、ラップ、クレジットカード、合成皮革、消しゴム、黄色いアヒルのおもちゃ、医療用チューブなどがあります。

 海水より重いので、空気が入ってないものは海底に沈んでいます。

 

ポリカーボネート(PC
 通称ポリカ。ビスフェノールA毒ガスのホスゲンからできています。透明で、衝撃にとても強く、耐熱性もあります。野外でも劣化しにくく、燃えにくい。摩擦やアルカリに弱い。

 DVDディスク、LEDランプ、水サーバー用の大型ボトル、ゴーグル、車のヘッドライト、飛行機の窓などに利用されています。

 水より重いので、海底に沈んでいます。

 

ポリスチレン(PS
 スチロールとも呼ばれ、発泡させた発泡スチロールが有名。原料のスチレンは、発ガン性が知られています。安価な使い捨てプラスチックとして大量に消費されています。透明で軽く、形を作りやすい。酸やアルカリにも強い。発泡したもの(発泡スチロール)は、軽量で断熱効果が高い。70℃くらいで柔らかくなりはじめます。硬いけれど脆いので、パリパリした感じ。油や有機溶媒、紫外線にも弱い。

 食品用容器、食品用トレー、使い捨てカップ・フォーク・スプーン、使い捨て弁当パック、PETボトルのラベル、ボールペン、CDのケース、カップ麺の容器、卵のケース、魚箱、断熱材などに利用されています。長期的な摂取は、神経系の中毒、遺伝子の損傷、免疫系への影響もあります。

 スチレンとブタジエンゴムのポリマーは、白っぽい半透明の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)となります。ヨーグルトの容器や、飲み口のついた使い捨てのコーヒーカップの蓋などに使われています。

 発泡したものは水面に浮かび、風に吹かれて海岸に漂着します。

 

ポリプロピレン(PP
 プロピレンからできています。軽くて、水に浮かびます。140℃くらいまでの耐熱性があり、煮沸できます。酸やアルカリにも強い。形を作りやすく、溶かしてリサイクルも可能。繰り返し曲げても折れにくい。野外では劣化しやすく、光安定剤や紫外線吸収剤を配合して対応しています。酸化しやすいので、酸化防止剤も添加されています。乳白色の半透明。

 タッパー、食品トレー、使い捨て弁当容器、ストロー、ペットボトルの蓋、ロープ、不織布、衣装ケース、結束バンド、プランター、化学品の容器、医療用使い捨て注射器、樹脂ペレットなどに利用されています。

 海水より軽いので、海ごみとなってたくさん漂着します。

 

メラミン樹脂(MF
 メラミンと、ホルムアルデヒドからできています。傷がつきにくく、耐薬性があります。色もつけやすい。耐熱性があり、燃えにくい。強酸や強アルカリに弱い。衝撃で割れやすい。

 食器類、汚れ落としのスポンジ、ボタン、接着剤に使われています。2004年の偽粉ミルク事件で有名となったメラミンは、腎臓に影響を与えます。汚れ落としのスポンジは、すぐに削れてマイクロプラスチックとなり、海に流出します。

 海水より重いので、海底に沈んでいます。